利用者体験のリアリティを高め、フィードバックの質を向上!日本ユニシス株式会社のPrott活用事例

Prott インタビュー Vol.19

Tim Prott-09 / 22 / 2017-Interview

お話を伺った人:

日本ユニシス株式会社
プラットフォームサービス本部
ビジネスプラットフォーム部 UXデザイン室長
香林愛子さん(HCD-Net認定 人間中心設計専門家)

プラットフォームサービス本部
ビジネスプラットフォーム部 UXデザイン室 担当マネージャー
小林誠さん(HCD-Net認定 人間中心設計専門家)

プラットフォームサービス本部
ビジネスプラットフォーム部 UXデザイン室 担当マネージャー
澤田憲之さん

1958年の創立から、あらゆる業種においてITサービスを提供している日本ユニシス株式会社様は、2010年頃に『ユーザビリティ&デザインセンター(以下UXデザイン室)』を設立されています。UXデザイン室は社内にユーザー中心設計に基づいた開発の手法・マインドセットを啓蒙したり、実際に手を動かして多くのプロジェクトに携わったりと、多方面でご活躍なさっています。

参照:大手SIer・日本ユニシスが「UXデザイン室」を設置しユーザー中心設計を社内啓蒙している理由|Goodpatch Blog

このUXデザイン室を中心に、プロトタイピングツール・Prottを導入したことで開発プロセスが大きく変わったそうです。今回は、Prottの導入によってどんな変化がもたらされたのか、また具体的な活用方法について伺いました。

ペーパープロトタイピングに感じていた“ユーザー体験の非現実味”

──よろしくお願いします。まずは、Prottを導入する以前のプロトタイピングの手法について教えていただけますでしょうか?

小林 ペーパープロトタイピングやExcelを使ったプロトタイピングでした。オライリージャパンが出している『Excelプロトタイピング』という本を参考にしていましたね。今(2017年7月現在)から7年前くらいです。Excelで作ったUIパーツ集をまとめていて、全社公開しているPC・スマートフォンのパーツをテンプレートとして使っていました。
Excelをベースにプロトタイプを作るのですが、利用者にテストしてもらう際には印刷したペーパーを使って利用体験をナビゲーションしていたんです。

──具体的に、どのようにテストを行なっていたのでしょうか?

小林 オズの魔法使い(※)で、人力でやっていました。コンピュータ役と進行役、そして利用者役を配置し、利用者がボタンを押したら、コンピュータ役があらかじめ印刷しておいたペーパープロトタイプを遷移先の画面に変えたり、想定しないボタンを押したら急いで手描きのものを作って対応したりしていましたね。

※オズの魔法使い
“本来であればシステム化されているはずの(そして顧客にはそう見えている)フロントプロダクト(例えばウェブサイト)を、実際は生身の人間が手動で操ること”
出典:グロースハックの大前提 「MVP」の種類と実例 5選 | グロースハックジャパン

──人力でテストされるときは、何画面くらいのペーパープロトタイプを用意されていたのでしょうか?

小林 10画面くらいでしょうか。あまり多くは作れないですね。

香林 付箋を使ってドロップダウンボタンや共通のヘッダーなどを表現するなど、試行錯誤を繰り返しました。

──その時に感じていらっしゃった問題はどのようなものでしょうか?

小林 準備が大変でした。対面の実施ですし、何人にも声をかけたり複数回行なったりするので、その都度準備する必要があったんです。また、コンピュータ役による利用者体験のリアリティが不十分なので、フィードバックの質にも課題を感じていました。
プロトタイプのリアリティを高めようとするとHTMLでモックを作成する必要性があったのですが、コストやスケジュールを鑑みて省略することもありましたね。他にも、制作物のレビューをお客様とメールでやりとりするときの煩雑さも課題でした。

・データ容量が大きくなりがちなためメール添付が難しい
・最新のバージョンがどれだかわからなくなる
・Excelにデザインを貼り付けてから指摘を吹き出しで書く必要があったのが煩わしかった

などなど。

──Prottを導入した決め手はなんでしたか?

香林 色々なプロトタイピングツールを調べている中で、日本語でサポートをしてもらえることや使いやすさに加え、我々が目指している方向と一緒だなと思ったんです。というのも、きれいなビジュアルデザインを作れる機能に強みを持っているツールはたくさんある中で、Prottはユーザー中心設計の考え方を踏襲しながら作っては壊すを繰り返せる考え方があって、それが我々とマッチしました。

小林 最初は、アニメーションを含めた細かい操作性を表現できるようなツールがほしかったので、今とは違う方向で探していました。でも、リサーチを重ねる中で違うなと思ったんです。価値を伝えるためにプロトタイプを作るのであって、細かい動作仕様も大事だけれど後の工程だなと。「プロトタイプは価値を伝えることにフォーカスすべきだ」と、選定のポイントが明確になり、Prottならそれを達成できると思いました。

──Prott導入にあたって障壁はありませんでしたか?

小林 本格導入前に、無料トライアル期間の30日で使用感やProプランの機能的な評価を行いました。複数人のチームで使うときの観点からも、Enterpriseプランのトライアルで十分な評価ができました。プロジェクトによって参加メンバーがお客様だったり、協力企業メンバーだったり、参加メンバーが変わることが予想できたので、そうした場合にも無駄なコストがかからないところは導入を後押してくれましたね。
学習コストが低いツールのため、チームメンバーもすぐ使えるようになりました。また、チャット問い合わせ対応が早いこと、日本語でもOKだったことも助かったポイントです。
受託開発を行っているお客様ともProttを一緒に使ってみたのですが、問題があったことはなく便利さを感じていただいています。

Prottの導入によって、多くの課題を解決できた

──どのようなプロジェクトに使っていましたか?また、どのような職種の方々がProttを利用されているのでしょうか?

小林 主に新規ビジネス・新規サービス開発プロジェクトにおいて使っています。UXデザイン室のメンバーや企画・営業担当、あとはデザイナー・SE、そしてお客様と、幅広い方が使っていますね。

主に、Prottを使用するケースは、

・HCD(人間中心設計)プロジェクトにおいてのプロトタイピング
・新規ビジネス、新規サービスの早期検証
・デザイン制作物の管理、共有、レビュー
・UI仕様の定義

プロジェクトの規模はさまざまですが、Prottエディター1〜2名、デザイナー1〜2名、そしてお客様1〜3名で使用することが多いです。

──Prottを導入してからの目に見えた変化はありましたか?

小林 オズの魔法使いで利用体験の検証をするより効率的で、何回も繰り返しリトライできるため、質・スピードともに上がりました。ペーパープロトタイプよりも操作感の再現性が高く、検証してほしいコンセプトに集中できます。また、プロトタイピングの再利用がしやすかったり、画面遷移(導線)の確認がスムーズになったりしています。コミュニケーションの質も効率化できていますよ。

以前よりもお客様を巻き込めるようになっており、80-90%ぐらいで持っていっても受け入れてもらえますし、これまでのような動きのない一枚絵では出てこない指摘をもらえます

デザイン作成物の管理やレビューはProttで一本化できており、感じていた課題の多くを解決することができました。

香林 やはり以前と比べてスマートフォンの案件が増えているので、ペーパープロトタイピングをするのはPCだったらまだしも、スマートフォンアプリの案件などには向いていないなと感じています。
当時は工夫して、スマートフォンをダンボールで作って紙を貼り付けるなどして操作性のリアリティを出そうとしていましたが、無理がありましたね(笑)。

澤田 今思うと、よくやっていましたよね。

小林 Prottを入れてから本当に変わりましたよね。外に持ち出せるので、日常の生活シーンで評価できるのは良いと思います。例えば、電車の中で使うことを想定したアプリであれば、実際に電車の中で操作した方が多くの気づきが得られます。電車に乗る時に、さすがにコンピュータ役が紙を動かして...とかできないですしね(笑)。

Prottがサービスの一部に!

澤田 今では、Prottを組み込んだプロトタイピングサービスを顧客向けのサービスメニューのひとつに入れているんです。

香林 「ユーザー中心設計を全部やりますよ」というメニューや、個別機能の改善、ユーザービリティの診断などいくつかのサービスがあるのですが、その中にプロトタイピングサービスというものがあります。ある程度既存システムがあって、要件が固まっているシステム・サービスに対して、ユーザー視点でシナリオを描きながらプロトタイピングしましょう、というものです。

澤田 お客様とコミュニケーションをする中で、「新しいサイトがどんな画面になるのか、実際に画面を見たい」という欲求があることがわかったんです。そういった意味では、Prottを使ってUI改善からアプローチしていくのは、サービスとしてわかりやすいのでは?と考えています。

人間中心設計専門家がユーザーへのヒアリングをして、ペルソナ作成・プロトタイピングをProttを通してサービスとして提供していますし、要望があればその先のデザインも行います。

まだ始めたばかりなので案件数は少ないですが、今後はもっとPRをしていきたいと思っています。

──Prottをご活用いただくことで、ユーザー中心設計の思想がもっと広まるといいですよね。本日は、貴重なお話をありがとうございました!

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Prottの導入により、リアルなユーザー体験を再現することが可能になり、サービスや事業をデザインするプロセスに大きな変化があったことが分かりました。検証段階で利用者がリアリティのある体験をすることで、適切なフィードバックを伝えられる点がメリットなんですね。

今回は受託企業においての具体的な活用方法まで伺えたので、このインタビューが受託開発を行っている皆様の参考になれば幸いです。