コードを書かなくても形にできるProttは上司や取引先とも使える - ヤフー

Prottインタビュー Vol.7

Tim Prott-08 / 28 / 2015-Interview

ヤフー株式会社
メディアカンパニー ニュース事業本部 ワイズ・スポーツ支援室
クリエイティブリーダー
小林 靖大さん

小林さんはスポーツ総合サイト「スポーツナビ」のリニューアルでProttをご使用されました。リニューアルの経緯や、実際のProttの利用方法ついてお話を伺いました。

Prottがあったからリニューアルに踏みきれた

——今日はよろしくお願いします。ヤフーさんは、なんと全社でのPrott導入をしてくださっているということで、その音頭を取ってくださっているのが小林さんなんですよね。

小林 そうですね。……グッドパッチさんとはいつも密にやりとりさせていただいているので、こうしてあらためてお話するのはなんだか不思議な感じですね。

——そうですね。いつもと同じようにざっくばらんにお願いします!
全社導入の話はあとでじっくり伺いたいと思いますが、小林さんには、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」リニューアルにProttを使用していただきました。早速ですが、Prottを使用した経緯から教えていただけますか?

小林 はい。まず前提のお話なんですが、今回Prottを使ってリニューアルした「スポーツナビ」はリリースして3年間、誰も手をつけたことのない「パンドラの箱」となっていました。

——パンドラの箱?

小林 ページ数が多いということもありますが、野球やサッカーってシーズンものでしょう? リニューアルの納期が、自然と「シーズンの閉幕からシーズン開幕」とタイトに定められてしまうんですね。弊社はIT企業ですから、当然ウェブに関するナレッジがある。良くも悪くもすぐに工数やスケジュールを頭の中ですぐに換算できてしまいます。だからこそ、「スポーツナビのリニューアルは無理だ」というのが常識のようになっていて。みんな、「自分はやりたくない」という雰囲気でした(笑)。

——なるほど。では、なぜ今回はリニューアルに踏み切ったのですか?

小林 Jリーグが3月から2リーグ制に移行する、という大きな改革を行ったことがきっかけです。久々の大きな変化だったため、Jリーグからも「ぜひ一緒に盛り上げてほしい」という声があったんですね。では、我々はどのような形でサポートしようかと考え、せっかくだからここでサイトのリニューアルをしよう、と思ったわけです。

——けれど、日程がタイトなことも、難易度が高いことも変わらないわけですよね。たしかJリーグの開幕は3月9日ですから……。

小林 2月末にはリリースしなければいけない算段でした。でも、リニューアルの話が出たのは年明けで(笑)。

——ええっ!

小林 しかも、そのとき手が空いていたのが、ビジュアルデザイナーひとりだけ。人も時間もかけられない。となると、ビジュアルモックをベースにしてつくるしかない。じゃあ、プロトタイピングツールを使ってみよう、というふうにスケジュールを逆算し、Prottの導入に踏み切りました。

——では、まずProttを使ったのはそのビジュアルデザイナーの方ですか?

小林 そうです。彼はコーディングや実装などは不得意で、たとえば「リンクして遷移させる」といった技術は使えないんですね。でも、デザインの力、頭の中にあるものを形にする力には当然長けている。その「得意なこと」だけでエンジニアに渡せるプロトタイプが期間内に出来上がったのには、正直驚きました。Prottがなかったらアグレッシブに取りかかることもなかったし、絶対にリリースできていなかったですね。

——それはうれしいです。ありがとうございます。

企画書ではなくProttで共有する

——でも、「パンドラの箱」を開けることを、上長はよくOKしてくれましたね。

小林 そこも、Prottのおかげなんです。

——おお。どういうことでしょう?

小林 決裁者に「1週間でこれができます」とProttでリニューアルの未来予想図を見せると、「ぜひやってくれ」とすぐにGOサインが出て。きっと、実際に動くプロトタイプを触ることで、感動したんだと思います。Prottを使えばゴールも共有できるうえに、決裁者のモチベーションも上げられる。普通に会議にかけるより、ずっとスムーズでしたよ。そうそう、それで、私は営業職にもProttを薦めていて。

——営業職ですか!

小林 ええ。代理店や取引先に営業に行く人に「これ、使えるよ」と。文字ベースの企画書をただ読み上げるより、画面を見せたほうが理解が早いことってたくさんあるじゃないですか。

——百聞は一見にしかず、と。

小林 おっしゃるとおりです。妙に凝った文字ベースの資料を持っていくより、目で見て手で触れるプロトタイプのほうが訴えかける力は強いと思います。QRコードやURLを送れば、たとえ取引先が遠隔にいてもリアルタイムで見てもらうことができますしね。

——正直なところ、その使い方は考えてなかったです。

小林 じつは、私がProttに魅力を感じている1つに、こんな使い方ができるということもあるんです。グッドパッチさんの思惑とはちょっと違う使い方かもしれませんが(笑)。

——いえいえ、ユーザーさんにどんどん使い方を開拓していただくのは、こちらも勉強になります。

小林 もちろん、通常の開発の場面でも大活躍ですよ(笑)。とくに、エンジニアとの連携。ウェブもアプリも、実際にコードを書くのってエンジニアじゃないですか。でも、UIに詳しいエンジニアはそこまで多くないのが実情です。ウェブでいえば、JavaScriptの動きを言葉で伝えたとしても、どう実装してくるかはプロダクトが出てくるまではわからなかった。それが、プロトタイプを見せれば明確な共通認識を持つことができます。

(↑実際のProttの画面)

——職種が違うと、共通言語がなかったりしますもんね。いろいろな職種があっても、「ビジュアル」が共通言語になる。

小林 そうなんですよ! 設計の段階でワイヤーフレームを鉛筆で手書きしても、骨組みだけだとどうもイメージしづらい、という人もいれば、完成図まで頭に思い描ける人もいる。そういう曖昧な部分をつぶしてからものづくりに取り組めるのは、ありがたいですね。

なぜ、プロトタイピングツールを全社導入するのか?

——では、全社導入に至った背景についてお話いただけますか?

小林 まだ決定したわけではないんですが(笑)、少なくともトライしてみようとしているところですね。もともと会社のなかで、プロトタイピング文化を浸透させたいという流れがあったんです。いま、世の中の流れってめちゃめちゃ早いじゃないですか。それこそ、3ヶ月スパンで目まぐるしく変化している。 そんな時代背景もあって、ゆっくり考えてじっくりつくる時代ではない、と考えている人が多くて。Prottがあれば、つくってフィードバックをもらう、というプロセスが圧倒的に早くなります。

——エンジニアが実装する前に、ディレクターとデザイナーがPrott上である程度クオリティの高い形にできますからね。

小林 ええ。それに、Prottの魅力は、ハードルが高くないことです。ウェブデザイナーやUIデザイナーは技術的なものに苦手意識を持っている人が多いですが、そういう人でもProttは何の問題もなく使いこなせる。Prottを使ったデザイナーは、「コードを書いたり実装する必要がない!」と喜んでいますよ。

——その声は、本当に多くいただきますね。

小林 もちろん、営業職の人だって、企画職の人だって簡単に使えます。それに、営業職のプレゼンの話のように、どの職種にもそれぞれの課題を解決できる使用用途がある。だったら全社的に導入したらどうか、と提案しているわけです。

——ありがとうございます。ほかの部署でもすでに使われているんですか?

小林 「Yahoo!ニュース」では社内プレゼンやミーティングに使っていますよ。アプリの改善はビジュアルに起こして行うのですが、その場でProttをいじり、実機で確認しています。「あ、こっちがいいね」「やっぱり元に戻そう」という感じでフィックスしていくというわけです。

——なるほど! 意志決定の短縮にもつながるわけですね。

小林 ええ。「持ち帰って明日また集まろう」と言ったって、みんな忙しいでしょう。大きいプロジェクトの懸念は、間延びしてしまうことなんですよね。「スポーツナビ」リニューアルのようなミニマムチームだとみんな主体的に動くのですが、メンバーが20人、30人と増えるごとに、どうしても動きが鈍くなります。まあ、それは仕方ないことなんですよ。だからこそ、できるときに集まって、手を動かしてさっと決める。そうしないとスピードを担保できないんです。

——30人もいるプロジェクトの場合、どのようにProttを使うのでしょう?

小林 あらかじめデザイナーがメンバーにプロトタイプを送り、会議の前に個々人からフィードバックをもらうようにしています。その場で意見を集めても、ああだこうだとまとまらないのは目に見えていますから。議論していくうちに趣旨がわからなくなっちゃったり。

——よくある光景ですね。

小林 そんな会議にしないために、デザイナーがプロトタイプを送ったら、まずは自分の席からフィードバックをもらうわけです。人前で話すのが苦手な人でもあらかじめ考えをまとめることができますし、その意見をもとにアジェンダも明確にできる。

——なるほど。

小林 人数が多くなればなるほど、一回のミーティングにかける事前準備は重要になります。Prottは、そこにも貢献してくれていますね。

Prottチームは友達のような存在

——最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

小林 Prottはあらゆる使い方ができるだけでなく、本当にフレンドリーなサービスです。Prottのプレスリリースなんて、まるで友達からの手紙みたいですから。中の人とも気軽にやりとりできるので、現場の人間としても非常にやりやすいですね。困ったときにひとりぼっちではないという安心感があるので、怖がらなくても大丈夫です(笑)。ぜひ、トライしてみてください。

——ぜひ、もっといろいろな使い方を生み出してください! 本日はありがとうございました